投資信託のコスト開示について

こんにちは。
金融教育家、投資信託ナビゲーターの大地恒一郎です。

2023年6月9日付日本経済新聞朝刊に、「投信、購入時の書類に総コスト記載 投資家わかりやすく」という記事が掲載されました。内容は、投資信託における投資家の負担するコストの分かりにくさを解消する方向に、投資信託業界が動き出した、とするものです。

遡ること3年前、私は2020年5月29日と2020年9月4日のこのコラムで、信託報酬をはじめ投資家が間接的に負担する投資信託のコストが、運用会社によって表記や区分の方法が異なり、投資家にとって極めて分かりにくいということを指摘しました。

その後、2021年6月に金融庁が公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2021」で、この論点が取り上げられましたので、顧客本位・受益者本位を標榜する投信業界は、いつかこの問題に真摯に向き合い、改善に向けて取り組むのだろうと、思っていました。

そしてそれは、昨年4月に、投資信託協会の「交付目論見書の作成に関する規則に関する細則」が改正され、第 6 条②(ウ)で「総経費率」を目論見書へ参考情報として記載することが定められたことで、一歩前に進みました。ただ、その施行日は、改正日から2年後の2024年4月21日からとされていました。日経の記事にある、「2024年4月から投資信託のコスト開示が変わる。」という部分は、これを指しています。

さらに記事では、「三菱UFJ国際投信は「eMAXIS Slim」シリーズで7月から目論見書での総経費率の目論見書への掲載を始める。」としています。投資家に人気のシリーズに焦点を当てているのですが、実は三菱UFJ国際投信では、「eMAXIS Slim」シリーズに先立つこと6ヶ月、2023年1月11日使用開始の一部のファンドの交付目論見書から、総経費率の掲載を始めています。

いまだにコストに関して、投資家を惑わすつもり?と思わせるような複雑な記載をしている運用会社がある一方で、いち早く対応に乗り出している運用会社もありました。

以下は、三菱UFJ国際投信「三菱UFJ Jリートオープン(年1回決算型)」交付目論見書から抜粋したものです。

はたして、この目論見書の記載内容が受益者にとってわかりやすいものかどうかは、意見の分かれるところかもしれません。
初めて投資信託を購入する方にとっては、まだまだ専門用語も多く難しく感じることでしょう。

しかしながら、本来信託報酬でまかなうべき、目論見書などの印刷費用や投信計理業務(基準価額算出業務)の外部委託費用などを、信託報酬に含めず投資家に別途追加のコストとして負担させている運用会社と、多くのコストを信託報酬でまかなっている運用会社を、同じモノサシで比較できるようになることは、とても良いことではないでしょうか。

そして今後も、受益者本位、投資家本位という目線は決してぶらすことなく、より分かりやすい表示方法を投信業界全体で模索し続けていくことが、投資信託の裾野をさらに拡大させていくことに繋がっていくのではないかと思っています。

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